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アメリカ研究クラスター

三牧先生
氏名 三牧 聖子(ミマキセイコ)
博士前期課程准教授
研究者データベース(オリジナルサイト)
業績一覧
研究室 志高館283
E-mail: smimaki@mail.doshisha.ac.jp

研究分野

アメリカ政治外交
国際関係

プロフィール

最初に渡米したのは、2006年。博士課程に入りたての時でした。アメリカ研究者としては遅い留学であったかもしれません。

当時アメリカは、2003年に始めたイラク戦争が泥沼化する中、戦争に関するさまざまな異論が噴出しており、日本にいたときには見えていなかった反戦の議論、アメリカという国家の暴力性を根本から問い直すような議論が行われていることを知りました。同時に、アメリカはなぜ、国家に対する批判的な議論も自由に行うことができる民主主義社会でありながら、「イラクが大量破壊兵器を保有している」という、不確かな情報に基づいた-結局、兵器は存在しませんでした-性急な武力行使へと突き進んでいったのか、理性的な議論は結局、国家の決断をとめられないのか、疑問も感じました。後にイラク戦争の愚かさを指摘するようになっていった知識人の多くも、当初はジョージ・W・ブッシュ政権による開戦の決定を、安全のためにはやむを得ないものと支持していました。

現在、アメリカは変化しつつあります。2001年の9.11同時多発テロ以降の20年間、アメリカは「テロとの戦い」を掲げて、アフガニスタンやイラクへ次々と軍事侵攻し、世界秩序や国際規範を大きく毀損しました。その根本には、アメリカの強さに対する自信や万能感がありました。しかし今日、20年間の戦争への反省や疲れを背景に、アメリカは世界各地の問題に首をつっこむべきではない、国内問題にできるだけ専念すべきだという非介入主義が広がっています。さらに新型コロナ感染症が世界中に広がる中、アメリカでは過去数十年の新自由主義路線のもとで広がり続けた経済格差が、医療格差、命の格差へとつながり、世界最多の感染者数・死者数を出すことになりました。この経験も、非介入の傾向に拍車をかけました。

2022年に起こったロシアによるウクライナ侵攻は、アメリカに大きな問題を突きつけています。ウクライナにおける凄惨な人道危機の実態があきらかになるにつれ、アメリカのより積極的な軍事介入を求める声は、国内外で高まっています。もちろん、1人でも多くの人命を救うために、アメリカも国際社会も知恵をしぼり、行動する必要があります。他方、こうした状況において、性急で誤った決断をしないためにも、アメリカと世界秩序とのかかわりあいの歴史を学び、アメリカの国内外の多様な声に耳を傾けながら、アメリカの役割を長期的に模索する知的態度が重要となるのではないでしょうか。
ぜひ、学生のみなさんと、アメリカと国際関係、その未来についてさまざまに議論し、学びあっていければと考えています。

学生へのメッセージ

アメリカではいま、若い世代が社会変革の中心的な主体となり、長期的には政治外交にも無視できない影響を及ぼすとみられています。1996年以降に生まれたZ世代は、アメリカの強さより、弱さをみて育った世代です。2000年代のアメリカは、対外的にはアフガニスタン・イラク戦争の膠着、肥大化する戦争関連費用に苦しみ、対内的には、広がる貧富の格差に引き裂かれてきました。若い世代にとっては、構造的な人種差別や、党派対立によって機能不全に陥る民主主義、拡大する貧富の差、脆弱な社会保障こそが、アメリカの「現実」なのです。

しかし、若者たちは、自国の現状の悲惨さや弱さを見つめるからこそ、よりよい未来に向けて積極的に行動します。Black Lives Matter運動や格差是正運動に従事し、銃規制や気候変動対策にも熱心です。政治家にもプログレッシブな価値観を求めます。対外的には、グローバル化する世界において、アメリカ一国の力には限界があるという冷静な認識から、アメリカは、多少の妥協をしても、共通の目的のために他国と協調しなければならないと考え、多国間協調を志向します。国連への関与はアメリカの国益にかなうと考える若者は、党派によらず増加しています。

さまざまにつながりあったこの世界において、アメリカの若者たちの活動や模索は、私たちと地続きのものです。アメリカ社会や政治外交についての理解を深めることは、私たちの社会や政治の未来への想像力も広げることだと考えています。

みなさんと一緒に学ぶ機会を、心から楽しみにしています。

American society has witnessed the rise of a new generation, called Generation Z (Gen Z), people born in the mid-1990s. This generation grew up with the incoherence of spending billions of dollars to pursue victory in the “war on terror” overseas while doing nothing to redress social disparities and racial discrimination at home. They are no longer believe in an “exceptional America” or a “strong America.” They have watched the United States gradually lose influence on the world stage and fail to live up to its own ideals on civil liberties, equality, and accountability to the public.

Though they have a gloomy view of their current life and near future, these young people are
actively engaged in social movements, hoping for a better future. Gen Z is strongly associated with activism, and works on removing all kinds of violence including racism, gun violence, police brutality, structural inequality, and irreversible damage to the earth’s environment caused by human activities. Externally, Gen Z can put partisan politics aside to come together in support of the United Nations. Most of them are willing to support international organizations like the UN in order to tackle global challenges.

Through understanding the struggles of American youth and how they have been changing American society and politics, we can enrich our visions for the future of our own society.

I am sincerely looking forward to sharing enjoyment of learning with you.

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