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教員一覧

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アメリカ研究クラスター

岡野 八代
氏名 岡野 八代(オカノ ヤヨ)
博士後期課程教授
研究者データベース(オリジナルサイト)
研究室 志高館287
E-mail: yokano@mail.doshisha.ac.jp
研究指導課程 博士前期課程・博士後期課程

研究分野

西洋政治思想史
フェミニズム理論

プロフィール

わたしは、三重県の松阪市で生まれ育ちました。松阪牛で有名なわたしの故郷は、大学進学を機に離れてみてようやく、歴史的に作られた複雑な差別構造をもった市なのだと気づきました。それ以来、差別やアイデンティティの問題に関心をもち、歴史的・理論的にこれらの問題を考えるために、哲学ではなく、政治思想を専門に選びました。内向的な思索ではなく、世界とのかかわりの中で、差別やアイデンティティの問題を考えたかったからです。
その後、博士課程に進学するさい、カナダに留学し、政治思想においてフェミニスト理論がいかに大きな貢献を果たしているのかを目の当たりにしました。差別やアイデンティティの問題に、ジェンダー構造・秩序は大きな影響を与えています。また、社会全体の隠された支柱こそが、ジェンダー構造です。みなさんの関心から、こうした問題を一緒に考えていけることを楽しみにしています。

学生へのメッセージ

わたしの学生時代には、大学院での研究にくわえ、友人たちとのお喋りのなかから、多くの先人たちの著作やことば、そして彼女たちの経験について学びました。そうした言葉は、いまなおわたしの心にしっかりと刻まれています。たとえば、わたしの研究対象の一人である、ユダヤ系ドイツ人女性で、戦後合衆国で活躍したハンナ・アーレントの次の言葉は、いまなおわたしの研究生活にとって大切にしている言葉です。

人間の創造とともに、「始まり」の原理が世界の中にもちこまれたのである。これは、もちろん、自由の原理が創造されたのは人間が創造されたときであり、その前ではないということをいいかえたにすぎない[ハンナ・アーレント『人間の条件』177頁]。

大学院での研究は、これまで考えたこともなかったほどに、みなさんの心と世界を広げてくれるはずです。予測不可能なことが生じるところに、研究の楽しさや可能性が秘められています。現実の社会とは違い、理念や思想の世界に触れることで、わたしたちは、真の意味で自由で平等となりえます。そして自由な心をもつことで、わたしたちは時間や空間の境界を超えることもできます。本研究科で学ぶみなさんとともに、そうした自由を実現し、感じられるようになりたいと思っています。
わたしの専門は西洋政治思想ですが、ただ単に著名な哲学者の言葉について思索をめぐらせるだけでなく、日本社会で現在生じている問題、たとえば、第二次世界大戦下における「性奴隷制度」・従軍「慰安婦」問題や、男女間の社会的地位における格差などについても論じています。みなさんも専門的研究を通じて、より広い世界へとぜひはばたいてください。

When I was a graduate student, I encountered so many words, books, and experiences of philosophers and theorists through not only academic activities but chats with my friends. Some of them still remain in my mind and soul. Words by Hanna Arendt, a German Jewish female philosopher, are still inspiring me:

“With the creation of man, the principle of beginning came into the world itself, which, of course, is only another way of saying that the principle of freedom was created when man was created but not before.” [H. Arendt, The Human Condition, p.177]

Studies at the graduate school will open your mind and world to the extent in which you could never anticipate beforehand. Such unpredictable experiences are unlimited possibilities which academic studies give us all. Unlike real society, the world of ideas and thoughts make us equal and free. Free mind enables everyone to go beyond the boundary of time and space. I hope you all students feel and realize such freedom at the graduate school of global studies.
Although my major is western political philosophy, I am more involved with what is going on in Japanese society than what famous philosophers said, such as the issue of sex slavery system of Japanese imperial troops under WWII, gender inequality in Japan, and so on. Your major or specialty is nothing but a step to wider world.

著書の紹介


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『ケアの倫理―フェミニズムの政治思想』 岩波新書 2024年
「ケアに満ちた民主主義のために、わたしたち人間がケアされ、ケアするひとであるという原点から、政治をいかに組み立てていけるだろうか」(第5章より)。本書では、ひとがそれなしには生きていけない「ケア」をめぐって、「ケアをするのは誰なのか?」という問いを切り口に、ケアされる/する人の真実の姿から正義や政治を問い返し、〈もうひとつの声〉を聴き取るケアする民主主義の可能性を追求します。


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『フェミニズムの政治学―― ケアの倫理をグローバル社会へ』 みすず書房 2012年
リベラリズムにおける公私二元論がいかに、依存する存在、ヴァルネラブルな存在というわたしたちの人間の条件を忘却させ、ケア労働を担ってきた女性たちから力を奪ってきたのかを明らかにしました。ヴァルネラブルな存在こそが社会の根源にあり、ケア関係から社会を構想することで、主権国家論に対抗しうる、反暴力で闘うフェミニズム理論を提唱しました。個人像からグローバル社会まで、フェミニズム理論は今何を論じることができるのかを探究することが本書の目的です。


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『生きる―間で育まれる生(政治の発見 第1巻)』 風行社 2010年
わたしたち人間は一人で生きていけない限り、必ずそこには、政治的な力が作用しています。政治的な力は、わたしたちの生を束縛するが、政治的な力はわたしたちをそうした束縛から解放してもくれます。本書では、第一章「つながる・つなぐ」に始まり、「産む」「共に在る」「いたわる」「見る」「依存する」「働く」「食べる」「物語る」といった、生を形作るわたしたちの行為と政治の作用について考察した論文を集めた、政治思想の分野においては稀有な論文集です。


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『シティズンシップの政治学--国民・国家主義批判』増補版 白澤社 2009年
古典から現代まで、「国民」であることの意味を問い、自由で平等な人格を尊重されるためには、なにが論じられないといけないかを包括的に論じています。増補版では、フェミニズム理論による主流のシティズンシップ論批判から一歩踏み出し、ヴァルネラブル(脆弱な、傷つきやすい)存在から出発した、政治的メンバーシップ論について、ひとつの提案を試みました。ネイションとシティズンの違いなど、日本語の「国民」という言葉では感じることのできない「国民」が歩んできた、複雑な歴史についても学べます。


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牟田和恵編
『家族を超える社会学--新たな生の基盤を求めて』 新曜社 2009年
本書では、「第二章 家族からの出発--新しい社会の構想に向けて」を執筆しています。本書全体で是非とも家族という朴で自然な愛情に基づくと考えられがちな家族は、歴史的に構築されてきた政治的制度であることを理解していただきたいと思います。政治思想において論じらてきた家族が、いかにわたしたちの多様な形の家族の営みの現実を歪曲してきたかを批判しています。


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岡野 八代 責任編集
『家族 : 新しい「親密圏」を求めて』 岩波書店 2010年


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エヴァ・フェダー・キテイ(著)、岡野 八代、牟田 和恵(監訳)
『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』 白澤社、現代書館 2010年

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