教員一覧
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現代アジア研究クラスター
氏名 |
周 俊 (シュウ シュン) 助教(有期) 研究者データベース(オリジナルサイト) |
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研究室 |
志高館279 E-mail: jzhou@mail.doshisha.ac.jp |
研究分野
中国政治史
中国共産党史
プロフィール
1987年中国湖南省生まれ。2012年早稲田大学アジア太平洋研究科修士課程入学、2020年同研究科博士後期課程修了。2023年同大学にて博士号(学術)取得。早稲田大学現代中国研究所招聘研究員、フェリス女学院大学非常勤講師、東京大学社会科学研究所特任研究員を経て、2023年より現職。専門分野は、中国政治史、とりわけ中国共産党史。2020年には、論文「中華人民共和国建国前夜における幹部の南下動員に関する考察:華北地域の農村・都市部の比較から」により第16回太田勝洪記念中国学術研究賞を受賞。
主著に『中国現代史資料目録集:毛沢東時代の内部雑誌』東京大学社会科学研究所グローバル中国研究拠点、2023年、主要論文に「中国共産党の「耳目」――新華社の『内部参考』の起源、構造及び機能(1949-1954)」『アジア研究』2021年67巻3号、「組織的血脈:党内交通研究的再検視」『中共党史研究』2021年6期、「中国共産党の血管:通信システムとしての機要交通に関する歴史的考察」『社会科学研究』2022年73巻1号、「永遠の秘密主義―現代中国における秘密保持制度の起源とその実態―」『現代中国研究』2022年49号、「現代中国における中央指導者の地方視察とその政治的意義(1949-1955)―GISによる可視化の手法を用いて―」『アジア経済』2022年63巻4号、「中国共産党の組織内における情報伝達(1948~1954)―「請示報告制度」を中心に」『中国研究月報』2023年77巻3号等。
学生へのメッセージ
中華人民共和国の建国の父である毛沢東。その名を一度は聞いたことがあるでしょう。首都・北京の天安門広場に毛沢東の大きな肖像が掲げられている中国はもちろん、社会運動が特に盛んだった1960年代の戦後日本も毛沢東の影響を強く受けていました。兵庫県宝塚市に「毛沢東思想学院」という教育施設が作られることさえありました。毛沢東と言いますと賛否両論こそあれ、革命家らしい豪放な詩、詞を数多く残した文人政治家です。17歳の若き毛沢東は、勉学のため故郷の湖南省農村を離れる際、次のような詩を父親に贈り、人生を切り開く決意を示しました。
孩児立志出郷関
(私が志を立てて故郷から旅立つ)
学不成名誓不還
(学問が成就することがなければ二度と帰っては来ない)
埋骨何須桑梓地
(骨を埋めるにどうして故郷の地に執着する必要があろうか)
人間無処不青山。
(人の世のどこにでも墓所とすべき山があるのだ)
中国の古典好きな毛沢東は外国語は苦手で、青春期に海外留学の経験もなかったことがよく知られています。しかし、実際のところ、毛沢東が自らの志を示すために作った詩は、明らかに日本の江戸時代末期の尊皇攘夷派の僧である釈月性の名詩(「将東游題壁」)をもじったものであり、原詩にわずかに手を加えたに過ぎませんでした。言い換えれば、閉鎖的な農村地域で暮らし、早年一度も外国へ足を運んだことのない毛沢東は、日本の明治維新に関わる人物の詩を熟知していました。このことから、当時、無名の農村青年である毛沢東がいかに注意深く海外の動向を観察していたかがわかります。
打算や損得に容易に惑わされず、人生の多感な時期に毛沢東は真摯に理想を追求し、読書の価値を重んじていました。毛沢東の事例はあくまで一例です。中国共産党の指導者について言えば、その他にも様々な事例があります。例えば、日本で留学した際に京都の嵐山で「雨後嵐山」を詠んだ周恩来もその1人でした。『周恩来 十九歳の東京日記』(矢吹晋編・鈴木博訳、小学館文庫、1999年)を読みますと、祖国のために日本で学ぼうとするも、故郷に残した家族への思いや、思い通りに上達しない日本語の勉強、目まぐるしく変化する政局などに翻弄された青年周恩来の葛藤を感じることでしょう。
しかし、毛沢東であれ、周恩来であれ、かつて責任感と情熱をもって日々勉学に励んだエリート青年たちは今や、中国共産党の革命を勝利に導いた偉大な指導者と称賛されることはありますが、見方によっては国民の命と暮らしを無視する暴君と叩かれることもあります。なぜ中国共産党の歴史には賛否両論が巻き起こったのでしょうか。革命とイデオロギーの時代が遠い過去のものになりつつある今こそ、政治的・道徳的批判ではなく、学問の次元で中国共産党の歴史、中華人民共和国の歴史を明らかにする慎重な作業が求められています。
もちろん、共産主義運動は、超国家性(国際性)を帯びる現象であり、一国史観を超えて検討し観察する視点も研究には必要です。中国と社会主義国の関係、とりわけ中国とソ連(あるいはコミンテルン)の関係は言うまでもなく、非常に重要ですが、アメリカ、日本、そして台湾に退却した中華民国政権との攻防も看過できない大きな問題でしょう。国や地域を問わず、中国共産党が関わった様々なイシューに関心をもつ学生の方々を広く歓迎いたします。
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